いわきび、森の明るみへ

四国の片隅から働き方や住まい方を再考しています。人生の時間比率は自分仕様に!

シームレスであること

 

 埃というのは凹凸のあるところに溜まる。表面がデコボコで段差のある平面は汚れやすい。清潔を保つにはしょっちゅう気に留めて掃除しないといけない。

 

   この凹凸はモノが増えるとおのずとできやすい。またタスクをたくさん抱えた状態でもそうなりやすい。とりあえず取っておく、引き受ける、放置する、そして時間がたちモノとモノの間に埃が溜まっていく。

 

 モノが増えると手間も増える。食材でも衣類でも情報でも。「何がどれだけあってどんな状態か」を把握・記憶し、良好な状態を維持する労力が在庫管理の内実である。だから、試行錯誤のはてに各々自分に見合ったモノの適量とその維持コストを知って実践することが快適な生活のコツとなる。

 

 モノの量以外に一般家庭に多く、かつ皆が無自覚だと思われるのは、不要な段差だ。室内に敷物がやたら多くないか?椅子のキャスターはその段差に動きを制限される。局所ごとにマットを置くとつまずきに注意が必要で、スリッパの上げ下げや着脱も神経をつかう。アルミサッシ窓枠の部屋や隙間風だらけの木造家屋ですごす冬には、「部屋全体を暖める」という発想がないとコタツや火鉢や湯たんぽといったアイテムばかり増えていくことになる。

 食卓を彩るはずのランチョンマットもテーブル上に段差を作る。献立が多ければマットの中にそれらを収めるために食器の配置に気を配らなければならない。生地によっては汁椀の底がひっかかることもある。食卓に変な枠ができてしまい、まるで何らかの制限を課されたようだ。

 

 STAY HOMEであらためて自分の暮らす部屋の仕様に目が向いた人もいるだろう。加えて在宅で仕事をするなら、家の中をいかにストレスフリーな環境にするか、室内で自在に行動できるかが要となる。これは自尊心にも直結する。

 

 ネットはもともと距離という物理的制約を超えて人々をフラットにつなげ得るツールだ。人との間に余計な垣根を作らずにすむ使い方が可能だ。

 

 物理的にも心理的にもシームレスであること。内も外もそうすることが快適への第一歩である。

 

 だから、何かを取り除くことによって何もない空間を作り出す。

 何をするかよりも何をしないかを注意深く吟味する。

 行動しない。それよにって、空間を回復させ、潜在力を状態を整える。

 

 今回のコロナ禍では、人間の経済活動の停止が自然環境の回復に効果的なことが証明された。社会生活においてもこれまでの過剰をそぎ落とし、シンプルでより善い生存を実現していけるはずだ。