いわきび、森の明るみへ

四国の片隅から働き方や住まい方を再考しています。人生の時間比率は自分仕様に!

新型コロナがただす他者との距離

 「新しい生活様式」が発表されてしばらく経つ。あれを「生徒手帳みたい」という巧みなたとえがツイッターに投稿されていて、じつにその通りだと思う。

 

 あそこに列挙された項目を全部実践するのは難しいだろうが、ソーシャル・ディスタンシング(Social Distancing)あるいはフィジカル・ディスタンシング(Physical Distancing)—感染防止のために人との距離を開けることーは防疫上やったほうがよい。というか、そもそもこれまで私たちは他者と適度な距離など築いてきただろうか。

 

  日本人はキスやハグなどスキンシップの習慣がない一方で、他人と適切な距離をもうけることは精神的にも物理的にも全くできていない。精神的・心理的距離の未熟さの例は次のようなものがある。自己と他者の区別がつかない、自分を組織を同一視する、近しい他者(同僚、後輩、目下の者、年下のきょうだい、子どもなど)を自分の心身の延長のようにとらえ所有物のように扱う、自分とまったく異なる心身と歴史をもつ他人に対して「察しろ」「常識だろ」と自分が経験する感覚世界が地続きである前提で圧力をかける。

 いっぽう物理的距離の面では、身体接触をともなう行為の大半がセクハラ、パワハラ、虐待と紙一重である。少し間違えばかんたんに不適切な接触にシフトしやすい。とくに大人が子どもに対して、男性が女性に対してする身体接触は驚くべきことに「何をしてもよい」かのようなふるまいが多い。子どもに対しては「判断力が未熟だから」、女性に対しては「愛しているのだから」を言い訳に身体的暴力が平然となされている。

 

 せめてプライベートゾーンを守ること、良いタッチと悪いタッチの区別くらいは大人なら学んでおく必要がある。

 

いいタッチわるいタッチ (だいじょうぶの絵本)

いいタッチわるいタッチ (だいじょうぶの絵本)

  • 作者:安藤 由紀
  • 発売日: 2016/02/20
  • メディア: 大型本
 

 

 ほかに日本社会で侵されている他者との相互距離はなんだろう。

 プライバシー。人が安全に暮らすためには最低限必要なものなのに、子どもには保障されないことが多い。とくに地方では。

 パーソナルスペース。これは日本の劣悪な住環境と満員電車であっさり踏みにじられてきた。

 

 どうか、これを機会に決して他者を侵すことのない適切な距離が私生活においても構築されていくことを切にねがう。