いわきび、森の明るみへ

四国の片隅から働き方や住まい方を再考しています。人生の時間比率は自分仕様に!

服と収入と立ち位置と

 かなり高額の買い物をしてしまった。来週末、久々に学生時代の同期や先輩、先生と会う機会があり、聞けばかなり盛大な集まりらしく、会場も温泉街の旅館にある大きなホールらしい。もう16年ぶりに顔を合わせる人びととお世話になった先生にせめて失礼がないように、参加を申し込んで真っ先に懸念したのは服装だった。

そこそこ小綺麗でセミフォーマルな服が良いだろう、しかしそんなの持っていない。また普段仕事用の制服が作業服なので私服もそんなに持つ必要がなく、かつすぐに移動する仮の居場所として地元に暮らし始めたからオフにこれと言って集まる場もなくて洒落た格好をする機会もなかったため、まともな服がない!という引け目と心配を抱えて週末やっと百貨店へ足を運んだ。

 

 結論からいうと、カジュアルフォーマル共に使えるパンツスーツ上下とインナーを購入して一括払いで済ませた。

 

 それは振り返ると、焦りと負い目と虚栄心に駆られて急いだゆえの選択だった。

 

 この日は百貨店にて、家族が持っているポイントカードを持参すればポイント8倍、かつ割引が出来たのに、持って行かなかった。前日に家族からチラッと聞いていたが、家族も出かけるためバタバタしていて渡しそびれており…。支払い時、店員にカードはあるかと言われた時点で家族に電話するか、その場での支払いを留保し取り置きをお願いすべきだった。その上家にあった商品券も持参したにもかかわらず、この全額を使っても予算オーバーし、かなり自腹を切った。

 

 この件で家族からはもうボロクソの非難である。

ざっくり言うと、こうなるのはあんたが情弱だから!であり、それはふだん一人でばかり行動するからだ、お金のない人に限って要領の悪い買い物をする、ポイント付加や割引デーを使った賢い買い方をしないという話。たしかにカードを使えばあともう一枚は安いインナーなら買えただろう。

 

 しかし、滅多に行かない百貨店のカードなど持つだけ無駄だし作る手間が惜しい。 何より百貨店を二つハシゴして(市内にそもそも二つきりなのだが)、もとよりどんな格好がしたいかのイメージもなく服飾売り場を回って疲れ、夕方には考える気力が萎えていた。試着時に値札を見てギョッとしたが、良いものはどのみち高くつくし、早くこの件を終わらせたかった。

 

 ちょっとした同窓会でもある今度の集まり。皆どんな社会的立場にあるのだろう。家族からは「正社員でちゃんとしている人」もいるのだから場に応じたきちんとした格好や振る舞いもできないと恥だと言われる。私は非正規雇用とはいえかなり恵まれた職場で賞与もつくけれど、世間ではしょせん非正規である。正規でないならそんな服装も振る舞いも要らないと思うのだが、大都市圏から15年くらい認識の遅れた地方都市ではこれほど国全体が貧困化しても中流意識にもとづく「恥ずかしくない服装」が捨てきれないらしい。

 

 地方の貧困労働者であるにもかかわらず、成功した中流層の振る舞いを規範に身の丈に合わない買い物をしてしまった後悔。人並みでありたいという尊厳と、世間の常識に屈従してしまったというやり切れなさ。

 

 まあ、もう今回は良い勉強になったと思おう。特別な日のために、少し高めの必要なモノを買っただけなんだし…。

 

 これを機に思い起こしたのは、ふだんの日、労働者とくに女性に課せられた常識的な身だしなみにかかるコストや心身への負担を見直して是正すべきだと思う。日々の化粧、スーツ、パンプス、極寒でも酷暑多湿でもストッキング…どれほどの負担か?これだけでなく、高度成長期やバブル時代の雰囲気を引きずった常識やマナーが、仕事や生活の合理化や快適さを妨げているかもしれないから。