いわきび、森の明るみへ

四国の片隅から働き方や住まい方を再考しています。人生の時間比率は自分仕様に!

地方で暮らすということ

人は殖え続けることが善なのか

私の居住地だけかもしれないが、バイトやパートに「ここまで要求するの⁉︎」という求人がとても多い。そういう所に限って「この賃金で⁉︎」である。 求められる責任や態度はフルタイムか、あるいは正規雇用者と同等に近い。つまり期間労働者としての賃金や待遇…

愛しのサルスベリ

いよいよ夏本番が近づいてきた。戸外で目を奪われる植物たちも盛夏の佇まいを見せる。ムクゲ、ヒメヒオウギズイセン、ルリマツリ、ササユリ、ランタナ…。 なかでも今年はサルスベリがいっそう鮮やかで美しい。私はサルスベリが好きだ。どの季節の姿も躍動感…

ぬるま湯の時間のなかで

日曜の夕方は小雨でも傘を差して散歩に出る。残業や休日出勤に追われる生活をしていると、休日の終わりに何かわずかでも仕事とは無関係な、否何らかの「用事」ではない時間を意識して持たないととめどなく仕事や世間の常識に吞み込まれ包まれて潰されてしま…

逆行する時間を生きる―『港町』に交差する生と死―

もう7年ほど空家となった隣家の庭は今夏も勢いよく緑に包まれた。ムクゲが咲き、夏草が茂り、今はそれも終わって真ん中に生えたレモンの木は黄色い実をつけている。誰も獲らないこのレモンは、たしか昨年も3~4月頃にその数か月前から果実をたわわに実らせた…

シュトレンの季節に

クリスマスがやってきた。SNSではシュトレンの画像がたくさん出回っている。アドベントを迎えてから毎朝一切れずつ食べていく慣習の、ドイツのクリスマス菓子である。 この数年で洋菓子店でもよく見かけるようになった。シュトレンを見ると、子ども時代のク…

文化的アクセスのインフラだったEテレ

菅首相のブレーン・高橋洋一氏がNHK改革案としてEテレの売却を提案した。news.yahoo.co.jp 当然ながらこの案には抗議の声がネット上あちこちで上がっている。幼い子どもに良い番組を提供してくれて育児中お世話になった、一斉休校でいち早く学童向け教育番組…

広場があること

夏過ぎから、退勤後には中心街の広場を通って帰るようになった。敷地の隅には美術館も図書館もある公共の広場だ。地元は城下町で、お城のふもとに廻らされたお堀と森に囲まれて、散歩やジョギング、運動にはげむ人たちが毎日行き交っている。 新コロ対策で室…

匿名の心地よさ

職場で現場行きや屋外作業、チームワークが増えたこの三か月ほど、自分がいかに田舎暮らしに不向きかを痛感させられている。車の運転テク、肉体労働、他人との共同作業、濃密な人間関係、集団行動、適度な声がけ、他人と雑談することが苦にならずその間合い…

ダブルケア時代の子育て懸念

自転車通勤の帰り道、市街地の大型スーパー付近を通ることがある。ちょうど退勤ラッシュであり、買い物に勤しむ人も多く、子どもを連れて帰路につく人もたくさんいる。そんな人混みを自転車で進んでいくと、いくつか気づくことがある。 学校や学童の子どもを…

風の抜ける場所

外出自粛が緩和されたからというわけでもないが、夕方の仕事帰りに自転車で散歩するのが目下私の楽しみとなっている。 コースは職場から自宅付近までは直帰して、さらに東南方向へ迂回するエリアが気に入っている。どちらかというと温泉街付近にかかるのだが…

自己完結の館

新型コロナウイルスを封じ込めるためにロックダウンしていた都市が、徐々に封鎖を解き始めた。日本とちがい、罰則や罰金を伴う厳しい外出規制が緩和され外へ出られた人たちの喜びはひとしおだろう。 しかしたとえ封じ込めに成功した国でも、コロナ感染拡大前…

憩いの朝はいつか

ダイニングの窓には隣家の若葉が揺れる。イタドリかな?と思ったがよく見ると丈の低いクルミの木にも似ており、よくわからない。休日の朝、晩春の緑を眺めながら朝食をとっていると、ふと昔よく行ったホテルバイキングの風景を思い出した。 地元では23日から…

そこに人が集うなら

母方の祖母が他界して2年半が経つ。 祖母が住んでいた家は今空き家だが、近くに住む叔母が庭や部屋の掃除を頻繁にしている。生前のこまめな手入れのせいか古いわりに内装はきれいで、法事をそこで行うこともあって電気・ガス・水道も通してある。ただ、経費…

DIYの起点

前に書いた、新しく農業を始める方が近況を話してくれる。 最近進めているのは家のリフォームだそう。これから住むのは数年間空き家として放置されていた物件で傷みも激しく、あちこち修理しないと使えない。ホームセンターで道具を買ってきて、床板の張り替…

それぞれのセカンドキャリア

年度末につき、周囲では人員の出入りが知らされ始めた。現職でも家族の職場でもとりわけ印象深いのは、定年退職の手前で早期退職し、かねてから暖めてきた第二のステージを歩みだす人たちだ。 一人は、若い頃からの夢だった農業を山間部の一軒家で始めるそう…

街の動脈を歩く

先週明けから、落ち着いていたはずの右足指がにわかに痛み出した。整形外科でのレントゲン撮影からは、骨折患部は7割方くっついているため添え木の必要はなく、湿布をしてもらう。 おそらく自転車再開と屋外作業に伴う動きすぎ、軽い飲酒によって痛みの閾値…

チャリの景色、クルマの景色

先週月曜から自転車通勤を再開した。それはよいのだが、炎天下の自転車こぎをあんなにキツく感じるとは思わなかった。自宅から職場まで、直行だと30分弱はかかる。行きも帰りも汗だくで、今まで当たり前に乗っていたことを不思議に思い、体力の低下に驚いて…

囲い込みの果てに

先週の日曜午後、一番近いコンビニで用事をすませたあと逆方向の坂道だがどうしても喫茶店へ行きたくて徒歩で向かった。自宅からたいした距離ではないが、最短距離につながる道路は山道を少し整地したていどの急勾配で、自動車が身体スレスレに通り過ぎてい…

地の利と行動力

このブログではもう何回も書いていると思うが、いま住んでいる地元は県外とくに四国外とのアクセスが非常に難しい。決して僻地ではなく、暮らすぶんには地方都市の中ではまずまず便利なほうなのだが、四国外へ出るときはいわば遠征プラン、メイン行動の予定…

名前のつかない困難

足指骨折後20日目にして、添え木を外すことができた。まだ完治はしていないので飛んだら跳ねたり自転車に乗ったりはできない。モーラステープを使用したので1ヶ月は患部を日光に当てないよう注意だ。 嬉しかったのは、入浴で患部を濡らす許可をもらったこと…

空き家問題が問いかけるもの

自宅近所はけっこうな勢いで空き家が増えている。のみならず、最近は空き家を取り壊して更地にする作業が進んでいる。近所づきあいが希薄なせいか更地になってからはじめてそこが空き家だったことに気づくこともある。閑静な佇まい区画であることも手伝って…

観光地に渦巻く時間

先月末、奈良へ旅行した折に乗り換えで京都駅を利用した。平日午後でほんの二十数分の滞在にすぎなかったのに、ホームへ滑り込んでくる電車は見るだけで気がふさぐような混み方をしている。京都の人混みは都市人口数や関西圏内の他府県からの通勤通学者に加…

家はたんなるハコモノじゃない

人が住まなくなった家というのはこんなに早く荒れ果てるものなのか。自宅周囲も空き家が目立つようになった。未曾有の少子高齢化で、空き家問題は今後ますます全国各地で拍車がかかることが予測されている。一方、マンションや戸建ては供給過多の風潮もある…

「家族≠セーフティーネット」の時代

日本家族をとりまく状況はそれはもう厳しい。家事、育児、養育、看護、介護といった全てのケアワーク、労働者の再生産、地域社会運営など市場原理以外の活動が個々の家庭へ一気に押し寄せている。 そして、そのコストを国家サイドが全然意識してない。企業も…

広い通りに立つ時

母校の正門前の歩道が、昨年工事が入って秋頃から拡張された。いざ整備された歩道を見ると何とも清々しい気分で、なんで今まで昨年まで放置されていたのか、出来るならもっと早くやってくれればという気持ちになる。 何しろこのエリア、市内の文京区でありな…

コンビニカフェを使う理由

このひと月ほど、退勤後まっすぐ休憩に向かう場所がある。自転車で30分以上かかるコンビニに併設されたカフェ。コンビニも最近イートインコーナーを設ける店舗が増えているが、ここはとくにスペースが広く屋外席もある。写真はその一隅。 工場の並ぶ職場付近…

舞台がはねたあとに

祝福を。 昨日は県内へ日帰りで遠出してきた。お目当ては芝居小屋での観劇。列車が山間部へ入ると一気に時間の流れが変わる。特急車内の窓から海と、田植えが済んだばかりの水田に反射する光に目を細めた次の瞬間、新緑と渓流の輝く山間へ移るのだ。 駅から…

脈うつ時間が戻るとき

隣家のムクゲのつぼみが膨らみ、昨日咲いた。わが家の食堂から夏を感じる。 お隣は空き家だ。四年前、高齢で一人暮らしをしていたおばさんが亡くなった。以来誰も住むことなく、週末ごとに入れ替わり立ち代わり親族の方やシルバー人材センターの人が来て、家…

アクセシビリティのさまざま

ある人が相対的に他の人より資源を多く所有していたとしても、それは必ずしも自由や力を有すること、豊かさ、社会的アドバンテージを意味しない。 所有する資源、財ーたとえば金銭、食料、土地、電子機器類などーを多く持っていても、その人が自分の意思で使…

私の導線(2)

祝福を。 写真は昨夕の散歩風景。梅雨入りしたのにろくに雨が降らず、例年と比べて全然六月らしくない体感である。そんな中目に入る光景は完全に夏のもので、この付近ではなんともう庭先で花火をやっているお宅があった。傍に犬が寝そべり、横の畑では葉物の…