いわきび、森の明るみへ

四国の片隅から働き方や住まい方を再考しています。人生の時間比率は自分仕様に!

帰郷した日をふりかえる

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祝福を。写真は飲食店に生けてある花木とその芽です。

そこかしこに春の気配が漂いはじめ、焦るべきなのか喜ぶべきなのか、今一つとるべき態度がわからない。が、ただ一つ、暦に惑わされてはいけないとは思う。自分のリズムを無視して司法年度や会計年度に合わせることは自分を見失うもとである。

帰郷した四年前の初夏を思う。向こうの部屋を解約し、仕事も辞めて、何とか滑り込みで次の仕事が見つかって数日後に出勤を控えていた。新幹線で山陽へ到着し、父の運転する車で四国へ向かう。

小雨が降ったりやんだりの天気だった。霧も漂っている。しかし、しまみ海道は市民マラソンをやっていて、雨の中ランナーたちが思い思いの姿勢で走ったり歩いたりしている。それは濡れてはいけない雨だ!ととっさに胸をふさがれる思いがしたが、ランナーたちののびのひした様子はとても強く印象に残っている。出場するからにはタイムを競い、時間制限もあるのだろうけど、走っている時は完全に自分の身体と、それを通して見える景色に没頭できるようだ。
瀬戸内の島は穏やかに佇み、道の両脇にはルドベキアが咲き渡る。今年新たに芽吹いたチモシーも照葉樹の葉も雨を受けて一斉に伸びようとしている。それは世界への無条件の信頼と肯定に包まれた情景で、これから始まる生活で自分に何があっても人生を肯定しよう、生きていることを楽しもう、と自然に決意させてくれるものだった。

あれから情況は変わった。良くも悪くも自分や周囲との関係は昔のままではない。けれど、どんな境涯にあってもつまるところ、海道を楽しむランナーの姿勢が生きる道筋のすべてかもしれない。世界からどれほど過酷な現実が突きつけられても、それを享受し意味づける力は、万人にあるのだから。