いわきび、森の明るみへ

四国の片隅から働き方や住まい方を再考しています。人生の時間比率は自分仕様に!

私の動線

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地元は急に寒さが戻ってきた。写真は土曜夕方の、中心街へ至る路。
街には路面電車が走っていて、中心街をめぐるには今もそれが便利だ。とはいえ交通じたいはとてつもなく不便でちょっと郊外へ住むとたちまち車がなければ移動に困り、その運転マナーがまた良くない。曲がり始めてから合図を出したり、間髪入れないタイミングで曲がったり、そもそもどうしてここを車が通れるんだというような狭い道を平気で運転する。公共の乗物はどうしても本数やルートが限られて融通がきかず、ほんとは徒歩10分で行けるような場所でも車を使うようになる。田舎ではよくあることだがこの街の場合、その方がたぶん「自分のイニシアチブで動けている」感を味わえるからかもしれない。

さて県内では昨年辺りから自転車運転のさいにヘルメットの着用がやかましく言われ出し、官公庁、学校関係者はほぼ有無を言わさず通勤時着用となっている。晴れた日はチャリでの移動がコスパ最高と思っていたが、こうなると通勤以外でもチャリ使用を控える人も いるだろう。

いったいこの街では何で移動するのが一番便利なのか。むろん各人の置かれた立場によるが、このコンパクトシティでごくごく中心街に限ってみれば、徒歩に路面電車がけっきょく融通がきく。

というのは、それが古くからある在る動線に適い、また街の動線を作り出しているからです。

路面電車に乗ってみれば判るが、とくに夕方から夜、街は昼間に見せなかった顔を露わにしてくれる。個人商店の明かり、軒に立つお客、居並ぶ看板、一瞬のアングルから成る小路の風景、民家、家路を急ぐ人等。生活圏と労働圏の近さがなす、程よい距離からこそ立ちのぼる生活風景が絵のように、お城の周りに繰り広げられる。

自転車なら、息せき切って通りすぎてしまうだろう、この寒い時期なら。バイクのヘルメット、または車のフロントガラス越しに見える景色もまた、見えている素材は上記と同じでも、自ら切るハンドルで風景はズームアップし、またズームアウトする。脇見を防ぐためにも視野は限られる。在来線は路面電車よりずっと速い。それゆえ目に留まる素材、アングルはやはり違ってくる。

地元は程よさの凝縮した、おそらく理想的なコンパクトシティである。それゆえ煮詰まりやすい。県外へ出るアクセスが限られ、人柄は丸くまた保守的になり、しかしそれゆえに足元の生活圏を他の街にないほど彩り豊かにした。じつに、些末な路傍も民家の軒も人の手が入った一角は活況がにじみ出る。

こうした情景に包まれて、私は自宅への最短距離を弁えつつ、地下道や横断歩道に何度も断ち切られる動線をたどって家路につく。