いわきび、森の明るみへ

四国の片隅から働き方や住まい方を再考しています。人生の時間比率は自分仕様に!

批評、紹介

逆行する時間を生きる―『港町』に交差する生と死―

もう7年ほど空家となった隣家の庭は今夏も勢いよく緑に包まれた。ムクゲが咲き、夏草が茂り、今はそれも終わって真ん中に生えたレモンの木は黄色い実をつけている。誰も獲らないこのレモンは、たしか昨年も3~4月頃にその数か月前から果実をたわわに実らせた…

乳牛と労働者~『家族を想うとき』にみるケアのゆくえ

longride.jp ケン・ローチ監督『家族を想うとき』(原題 Sorry Missed You)は、グローバル資本主義下に台頭したギグ・エコノミーの労働問題と、不安定雇用に揺さぶられる家族のゆくえが中心的論点とされてきた。物語は不安定な生活から脱してマイホームの購…

食を考える映画たち~amazon、Netflixにて視聴可~

STAY HOMEで自炊にハマったり日々の食事を見つめ直すことになった方も多いかもしれない。そこで、COVID-19がどうなろうと続いていく日常の食について再考する情報を与えてくれる映画を紹介する。 2004年公開の「スパーサイズ・ミー」 Amazon.co.jp: スーパー…

前田正子『無子高齢化ー出生数ゼロの恐怖』から言えること

人口減少、人手不足、少子化、高齢化、若者の貧困化、日本国全体の貧困化—。これらが一つの糸で結ばれるのが本書である。 これらの問題は近年頻繁に論じられるようになったものの、それぞれ個別に語られることが多く、まして若者支援や国内労働市場における…

アメリカという大きな家ー想田和弘編集『ザ・ビッグハウス』に寄せてー

http://thebighouse-movie.com ミシガン大学アナーバー校が所有し、同大学のアメリカンフットボールチーム「ウルヴァリンズ」の本拠地である巨大なスタジアム。その通称ビッグ・ハウスを題に冠したこのドキュメンタリーには「アメリカ国家の縮図」を描いたと…

役割を生きる

人間、社会の中で生きていれば、日々何らかの役割を負ってその日を回している。働いていれば勤務先での担当業務があり、一次産業従事者であれば日ごと季節ごとに生き物の世話があり、家では家事が待っている。介護や育児を担う人ならケアラーや親としての振…

脈うつ時間が戻るとき

隣家のムクゲのつぼみが膨らみ、昨日咲いた。わが家の食堂から夏を感じる。 お隣は空き家だ。四年前、高齢で一人暮らしをしていたおばさんが亡くなった。以来誰も住むことなく、週末ごとに入れ替わり立ち代わり親族の方やシルバー人材センターの人が来て、家…

故郷離れて~創作の彼方へ

世の夫君あるいは女性を恋人にもつ男性たちは、女が道を究めようとすることをどのように考えているだろうか。 たとえば芸術やスポーツや特別な技能を要する仕事の技芸を、一人の女性が趣味道楽の域を超えて習得し貫こうとするとき、身近な男性はどんな態度を…

ビッグイシューから学んだこと

ビッグイシューという雑誌をご存知でしょうか?ホームレスに仕事を提供し、自立を応援する事業として、ホームレス当事者が路上で販売する雑誌です。 定価は1冊350円、このうち180円が販売者の収入となります。最初の10冊は無料で販売者に提供され、その売り…

Hans Blumenbergのこと

祝福を。 今日は私の最も大切な哲学者・ハンス・ブルーメンベルク(Hans Blumenberg)をご紹介します。「隠喩学」(Metaphorologie)(メタフォロロギー)という概念のもとに、「絶対的メタファー」の変形によって表示される世界理解の変化をたどりつつ、哲…